郡司敏郎 – 移動ごはん 又兵衛

郡司敏郎 - 移動ご飯 又兵衛

私が運営するおもてなしラボ では、おもてなしカフェ と題してガレージスペースでキッチンカーに曜日変わりで出店してもらっている。
カフェと付けたのは、シャレオツだから(と信じて疑わない)。

さて、今回ご紹介したいのは、そんなシャレオツ(!?)なおもてなしカフェの金曜日を担当してくれている\移動ごはん又兵衛の店主 郡司敏郎/。またの名は”グンちゃん”(と周りから呼ばれている)。自他ともに認めるヘンタイの彼が、私のことを師匠と思っていることは、少々心外だが、そんな師匠からみても彼の人生が”ド”ヘンタイで溢れてるのでここで披露したい。

沖縄移住で全てが変わった

話は「人生一回きり!」と一大発起して沖縄に1年間移住した10年前から始まる。

グンちゃん

沖縄では、今までにやったことのない仕事をしたいなーっと思ったので、住み込みでサトウキビ畑で働いたり、飲み屋で働いたり。その時に”こんな自由な人がいっぱいいて、人生これでいいんだ!”って思って(笑)。それまでは社会人たるもの、仕事をして、税金を払ってみたいに思っていたので・・・。

(沖縄滞在中に、将来お嫁さんになる”にゃみー”と出会うのだが、それはまた別のお話)
そして1年間の沖縄生活を終え、地元に戻り、印刷工場で働いていたグンちゃんは気づく、自分は”普通の社会に戻れない不適合者になってしまった”と。そう、グンちゃんの価値観は沖縄で根底から掘り起こされ、もっと自由に素直に生きたいと思うようになっていた。そんな矢先、2011年3月11日の東日本大震災が起きる。

グンちゃん

被災された方は、自分が明日こういうことになっているとは想像だにしてなかっただろうな、と。自分も後悔のない生き方をしたいと思った時に、沖縄で出会ったキッチンカーを思い出しました。

半年の準備期間を経て、キッチンカーを始めたのは35歳の時。地元、多古町のブランド米を使った”おにぎり屋”として移動ごはん又兵衛はスタートした。なので、キッチンカーももちろん”和”テイストだ。

まぎれもなく、”おにぎり屋”の佇まいだ。木だし。障子あるし。

ちょっと話は逸れるが、又兵衛デビューである「震災復興」イベントで偶然か必然か、私はグンちゃんとファーストコンタクトを果たしている。顔を覚えられないグンちゃんは、もらった名刺に得意の似顔絵を描くのだが、その甲斐無く、4年後のセカンドコンタクトであるはずの出会いで、ファーストコンタクト恒例儀式の名刺交換を再びしている。
後日談だが、顔を描いた最初の名刺は、洗濯機で今現在グチャグチャらしい。

おにぎりからカレーライスに発展

しかし、おにぎり屋としてキッチンカー人生は短かった。
知り合いの進めで始めたインド人から教わったサイドメニューのカレーが主役のおにぎりを横目に人気になっていく。っとなると半年後には明白だ。又兵衛は、おにぎり屋からカレー屋に(カレーだけに)華麗に変身を遂げる!

グンちゃん

当初はそのインド人にカレーを作ってもらってたんですけど「めんどくさい」って言われて(笑)レシピを教わり、自分で作るようになりました。地元のブランド米”多古米”を使いたかったので、”ナン”ではなくカレー”ライス”にこだわってます。
MEMO
多古米(たこまい)とは、千葉県香郡多古町で生産されたお米で千葉県産の生産量のおよそ2%。多くは親戚など縁故米として消費され千葉県内でも流通することが少ないため「幻のお米」と呼ばれ、ミネラル分が多く、粘りがあるのが特徴です。
江戸時代には徳川幕府献上、昭和38年には天皇陛下献上米に選ばれ、さらに昭和46年「全国自主流通米品評会」において食味日本一に選ばれました。また近年でも平成2年に日本の米作り百選、平成26年度では皇室献上米に選定されました。

又兵衛が作るカレーのこだわりは、無添加
種類にチキンとベジタブルカレーがあるのだが、どちらもベースのスパイスは以下の通り。今流行りのグルテンフリーだ。変な物は全く入ってない。まさに食べる漢方カレーと多古米の「あら 意外に合うわね ハーモニー」だ。

また食材にもこだわる。
チキンカレーの鶏肉は、ビタミンEが一般的な鶏肉の3倍以上の北海道産の桜姫を使い、ベジタブルカレーには一切の動物性を使わず、地元で取れる旬の野菜からでる旨味だけでコクを出す。

グンちゃん

”美味しくて安心安全”をモットーに作ったカレーを直接お客さんに販売したいです。

嫁が語る”グンちゃん”からわかる本質とは?

と、1時間以上玉ねぎが飴色になるまで炒めながら、意外にまともなことを語るグンちゃん。なんかつまらないので、おもむろに嫁さんである”にゃみー”に漠然とした質問をぶっ込む。「どうなの?」と。その答えは「私は人が好きだけど、グンちゃんは人に興味がない」とポツリ。そんな”人に興味がない”グンちゃんを振り向かせたあなたが1番スゴいんだよ〜と言い放つのをグッとこらえながら思った。人に興味がない、という一方で、人(お客さん)に安心安全な食事を提供したい。矛盾しているようだが、多分こういうことだ。自分みたいな不適合者とカレーを通じて関わってくれた人との関係は大事にしたい、というちょっとひねくれたグンちゃん流の一期一会が根底にあるのでないかと。

又兵衛カレー

なんのコネもなく始めたキッチンカー。もちろん同じ業界には誰も知り合いはいなかったという。でもそんなグンちゃんの”顔を覚えられないが人を大事にする人柄”の転機は、らしく”人とのつながり”から訪れる。千葉県富里市で毎月第1日曜日に開催する「とみ市 」に参加。そこでの出会いが大きかったと語る。

グンちゃん

とみ市で出会った出店者さんの中に山のおんぶ に関わっていたじんわり のナオちゃんと知り合い、紹介で山のおんぶに出店できることになって舞い上がったのを覚えてます。お客としていつも楽しんでいたイベントにまさかキッチンカーで出店できるなんて。

山のおんぶ」の参加を機会に他のイベント主催者にも声をかけてもらうようになった又兵衛は、佐倉市のイベントでも引っ張りだこだ。

今では、チキンカレーとベジタブルカレーの2種類のカレーに加え、地元老舗和菓子屋の3代目である同級生から教わった抹茶プリンをもとに開発したチャイプリン、そして、研究心はアレンジを繰り返し、今ではチャイプリンを含め、コーヒー、マンゴー、黒糖きな粉、塩バニラとプリンの数は5種類に増えた。もちろん、プリンも無添加だ。

又兵衛カレー

カレーの仕込みには約4時間かかる上に、大量には作れない。イベント出店しない日は仕込みに終われる毎日だ。そんなグンちゃんに「将来はどうしたいの?」と聞いてみると

グンちゃん

いつかは自分のお店を持ちたいと思ってます。あとカレーライスだけじゃなく、好きな音楽や絵からのつながりも作ってみたいと思ってます。

その歩みは決して早くはないが、ただそこに後悔はない。明日どうなっているかわからないからこそのゆっくりした歩みに感じる。

取材の終盤に「可愛い子の顔は覚えますよ!」と無駄な抵抗を見せようとするグンちゃんの目はやはりどこか”ド”ヘンタイだ。どこかのイベントで移動ごはん 又兵衛を見つけたら、カレーライスはもちろんだが、カレー越しのグンちゃんの目にもぜひ注目いただきたい。納得するだろう。

又兵衛カレー

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